’00.7.15

 チーコが亡くなる時、私は大きな声で私の名前を呼ぶ母の声で目が醒めました。でもそれは母が私を呼んだ訳ではありませんでした。その時は誰も私の名前を呼んでいなかったそうです。それでもあの時、目を醒さなければチーコの発作に間に合わなかったでしょう。きっと何か不思議な力が、私にチーコの最期を看取るように働いたのでしょう。

 チーコは次の日に動物霊園の方に運ばれて行きました。そしてその夜から妹と私に不思議な事が起こり始めました。

 チーコは毎回家族の誰かと一緒に寝ていました。たまに夜中に外へ出ている場合は、私の部屋のベッドの脇の窓から戻って来る事が多かったです。

 チーコが亡くなった次の日の夜、夜中にフッと目を醒すと真っ暗な部屋の中で私の枕元に座っているチーコの気配がありました。それはまるで外から帰って来たチーコが枕元に座っている感じです。触ってみると確かにチーコの手触りがします。真っ暗な中で確かな手触りを感じながら「チーコが帰って来たんだ」と思い声を掛けます。でもそこに座っているチーコはいつもなら返す返事をせず、ただそこに座っているのです。

 朝になって食事を取りながら昨晩の出来事を家族に話しました。そうしたら妹も同じ事があったそうです。妹のところではチーコはふとんの上にいて触るとのどを鳴らしたそうです。でもやっぱり一言も声は出さなかったそうです。

 それからチーコは毎日のように妹と私のところへ出て来ました。またある日の早朝には、父が台所の椅子から降りて妹の部屋へ入っていくチーコの姿(気配)を見たそうです。でもなぜか母の元には姿を現わす事はありませんでした。

 そんな事が何回か続いたある日、妹の元へ出たチーコが妹の手をくわえて引っ張ったそうです。妹は「ごめんね。一緒にはいけないの」と謝ったところ、チーコは引っ張るのを止めて消えてしまったそうです。その話を聞いた日の夜、今度はチーコは私のところへ出て来ました。私は昨日の出来事を知っていたので、チーコについて行ってみようと思いました。チーコは私の手をくわえて引っ張ります。私はチーコの引っ張る方向へと、まるで宙を飛ぶような感じでついて行きました。チーコは私の部屋の窓から外へ出ようとしました。私もそこから外へ出ようとした瞬間、私は外にある侵入者よけの柵にぶつかり、跳ね返されました。チーコは窓の外で私をジッと見ています。そしてその姿が何故か大きな真っ白い、まるで狐のようなす方に変わり闇に消えてしまいました。

 そんな事があってからチーコはあまり姿を見せなくなりました。そして最後の49日の朝、母の元へ現われたそうです。母がふとんの上の重みに気付くとそこにはチーコが丸くなって寝ていたそうです。母はチーコを撫でながら、何故今まで現われて来なかったのか、何故あんな事になってしまったのかを話し掛けたそうです。それでもチーコは何も言わずのどを鳴らすだけで、そのうちに白茶の身体がだんだんと黒くなって、薄い影に変わって消えてしまったそうです。その日からチーコは家族の元へ現れる事はなくなりました。

 ちょっと夏らしい、不思議な内容になってしまいましたが、これは全て私達家族が体験した事実です。その後何匹かの猫達を見送って来ましたが、姿を現わす猫はほとんどいません。きっとチーコの時みたいに一匹だけで飼っている場合と複数で飼っている場合では猫の方も条件が違うのだと思います。猫の幽霊なんて滅多に見れる物ではないと思いますし、自分の飼っていた猫の場合、恐いと言う気持ちは全くありませんでした。逆に出て来てもらって嬉しいと思う、そんな不思議な体験でした。