’00.11.5.
ある年の、枯れ葉舞い散る11月も終わろうとしていたある日。その日は土曜日で仕事が休みだった私は、柔らかな日射しを楽しむように、ゆったりとした午後を自宅で過ごしていました。
どこからかネコが一生懸命に鳴く声が聞こえていました。でも、自宅のネコはちゃんと頭数が揃っているし、よそのお家のネコが鳴いている物だと思って、あまり気にせず、本などを読んでいたように覚えています。
その声はしばらく経っても、聞こえていました。それもだんだんと大きく、切羽詰まった声で鳴くようになって行きました。本に目を落としていた私も、だんだんとその声が気になって来て、本に集中することが難しくなって行きました。「後15分鳴いていたら、見に行こう」そう思いながらも、実際に見に行くにはちょっと勇気が要り、玄関を出たのは、「見に行こう」と思った時間より30分以上も経っていました。
玄関を出た私は、丁度階段を登って来る上の階に住む子供と、下から来た人に驚き、階段の踊り場から階段入り口のひさしへ飛び乗って逃げる白い仔猫を目撃したのです。登って来た子供は、いきなりダッシュした仔猫に驚き、階段を登る足が止まった状態でした。取りあえずその子供に、仔猫の事を尋ね、関係ないとわかると階段を降り、仔猫を探しました。
仔猫は階段横の植え込みで、小さくうずくまりながら、それでも精一杯の声を張り上げて鳴いていました。私はその姿を確認してすぐに自宅の台所へ戻り、煮干しを1掴み持って、仔猫がいる植え込みへと引き返しました。その時にはまだ、その仔猫を飼おうとは思ってもいませんでした。ただ仔猫がお腹を空かせているみたいで、何かを与えてやろうと思っていただけでした。
仔猫は戻った私を見て、ちょっと後ずさりをしながら、それでも鳴き声は少し小さくなっていました。私は持っていた煮干しを1つ、その仔猫の近くへ投げてみました。仔猫はちょっと警戒して、しばらく煮干しを見つめ、それでも空腹には勝てなかったのか、煮干しに近付き口にくわえ、その瞬間、後ろを向き、煮干しを食べ始めました。
最初の煮干しを飲み込むように食べた後、仔猫は私の方を振り返りました。その振り返った場所より少し私寄りに、もう1つ煮干しを投げ入れてみると、仔猫は今度は後ろ向きになることなく、煮干しを口にしたのです。そしてもう1つの煮干しを、私は自分の足元の近くに置きました。仔猫は目の前にある煮干ししか目に入らないようで、私の足元へ近付き、煮干しをくわえたました。それと同時に、私の手は仔猫を捕まえていたのです。
仔猫はちょっとびっくりしていましたが、煮干しを口から放さず、私の事を見つめました。私もじっと見る仔猫の顔を見つめます。仔猫は私の片手に乗るくらいの大きさで、両目の色が違う、いわゆる「金目銀目」のネコでした。
今まで両目の色が違うネコの話を聞いたことがあっても、実際に目にするのは初めてで、記憶のどこかに「金目銀目の白ネコは、Lucky Cat」とあったので、仔猫の顔を見た瞬間に「うちのネコにしてあげる」と仔猫に言ってしまいました。
この日、うちの子になると決まったネコが、現在のひーちゃんです。ひーちゃんの名前の由来は、「拾ったネコ」だから、ひーちゃんなのです。