’04.2.4.

  去年の今日、つぶが16歳と4ヶ月の生涯を閉じました。つぶはとても性格の良い猫で、他の猫と喧嘩をする事を好まず、人間に対してはいつまでも膝の上にのって甘えたがりの、そしてとても骨格の大きな猫でした。

 つぶは唯一、外を出歩くのが好きな猫でした。両親と一緒に2階に住んでいた頃は、ベランダから脱走をして、他所の猫と追いかけっこをしたり、仕事から帰って来る私達を出迎えたりしてくれました。迎えてくれる時、遠くから姿を認めて走って来る姿は、ふさふさした毛を揺らしてちょっと猫には見えない程でした。腕等も他の猫と比べるととてもしっかりしていて、つい「大きくてかわいい」と思う程でした。

 つぶの終の住処になった3階に越してからも、3度程ベランダからジャンプして脱走しましたが、それでもやはり高さが堪えたのか、それ以降は2度と脱走することなく、窓辺から外を見る生活をするようになったのは、つぶが8歳の秋頃でした。その後、ぶぶが引いた風邪がなっちゃんに伝染り亡くなった時に、獣医さんから「次はつぶちゃんの番だね」とまで言われたのに、兄妹のちなやなな、ゆめが先に亡くなり、つぶが16歳のお誕生日を迎えられるとは家族の誰もが予想していませんでした。

 つぶの身体に異変が見られるようになったのは、亡くなる半年前でした。のどにしこりが出来て、鼻血を出すようになったのです。それは病気としては治療の出来ない物でした。また治療が出来る場所でもありませんでした。ただ幸いな事につぶの食欲は減る事がなく、お刺身や大好きな物が食卓に上る時は、ぴったりと食卓に貼付き、くれそうな人の事をじっと見つめて、もらえると美味しそうに食べていました。私達も時間に限りがあるので、出来るだけ喜びそうな物をおかずにする日が続きました。ただ、食欲は減る事がなかったけれど、つぶの体重は日に日に減っていきました。

 つぶが最期まで食べていたもの。それはほたてのお刺身でした。まぐろや鯛のお刺身も好きでしたが、亡くなる1ヶ月前あたりから受け付けなくなっていったのです。冷凍庫にはほたてのお刺身が常備され、つぶが食べたがると1つずつ解凍され、小さく裂いて与えました。亡くなる前日まで、その行為は続きました。段々と痩せて、骨と皮だけになってしまったつぶは、歩く事も出来なくなりおむつをあてるようになりましたが、それでも最期までしっかりと食事を取っていたのです。

 いよいよつぶの具合が悪くなってからは、なるべく誰かが家にいるようにしていたのですが、息を引き取った時には誰もいませんでした。私が仕事を一段落させて実家に付いた頃には、つぶは静かに置かれていたペットベッドの中で、苦しんだ様子もなく、眠った形のまま亡くなっていました。まだ体温が残り、硬直も始まっていない状態あったので、後30分早く戻れたらと思った事は、言う間でもありません。

 でもつぶは最後の最後まで、見送る私達に見送るべき時間を与えてくれたので、家族の気持ちの中に悔いが残る事はありませんでした。いなくなってしまった後はさすがに寂しさが残り、それは今でも続いていますが、好きな物を好きなだけ食べて、眠るように息を引き取っていたつぶはやはり大往生だったと思えるのです。

 今、あんよが同じような腫瘍を顎に持っています。やはり獣医さんに見せたところ、治療が難しい状態です。残された時間が短いのなら、あんよにもつぶのような時間を過ごさせてあげたいと思います。